消えた利用者(現代のメアリーセレスト号事件)
わたしは、スミヨシ大学図書館で働いている。
図書館には集団学習室があり、ここでは話をしてもいいし、夏は涼しいので人気がある。
きのう、学生さんたちが8人くらい、
「集団学習室のカギ、返しまーす。」
とカウンターにきた。
わたし「エアコンの電源とか、だいじょうぶですか?」
学生さん「はい!」
学生さんの「はい!」が、あまりに間髪をいれない感じだったので、
わたしは違和感を感じた。
学習室の戸締りはわたしの担当なのだが、エアコンつけっぱなし、窓の開けっぱなしはよくあるのだ。
わたしは、もう1人の司書さんに、
「学習室を見てきます。」
といって2階へ上がっていくと、そこに驚くべき光景があった。
学習室は、鍵はかけられているのだが、照明は煌々とつき、
エアコンからは涼しい風がビュービューふきでている。
なにより、机の上には、ノートや本が広げられ、
イスや床にはカバンがおきっぱなしなのだ。
わたし(これ、どういうこと?)
わたしの頭の中に浮かんだのは、
「メアリー・セレスト号事件」(1872年)である。
海を漂流している「メアリーセレスト号」という船が見つかったのだが、
その船には、乗組員が1人も乗っていなくて、しかも何か事故にあった形跡もない。
救命ボートも残っている。
メアリーセレスト号ではふだん通りの生活が営まれていたらしく、食べかけの食事まで残っていた。
いったい乗組員は、どこへ消えてしまったのかという謎の事件である。
わたしは、照明、エアコンを消すと、1階に駆けもどり、
わたし「たいへん、たいへん、・・・。」
と司書1さんに状況を説明した。
そこへ、
別の学生さん「学習室のカギ、かしてくださーい。」
とやって来た。
わたし「それが・・・。
お貸しできないんですよ。
この前の利用者さんが、荷物を置きっぱなしにしてしまっていて。」
といった。
学生さん「えーっと、それ、ぼくたちなんです。」
わたし「?」
司書1さんは、35歳と若いこともあり、事情を理解したらしい。
司書1さん(学生に対し)「カギをかけたとはいえ、私物を置きっぱなしにするのはよくないことですよ。
地震でもあったら、図書館には入れなくなることもあるんですよ。
それに、照明・エアコンのつけっぱなしもよくないですよ。」
と言って、注意したうえでカギを貸し出していた。
わたしにも、ようやく事情がのみこめてきた。
学習室は利用時間2時間という制限があるので、
(長く使いたい。)と思う学生さんが、友だち同士で2時間ずつ予約をしたのだろう。
そして、2時間使ったところでいったんカギを返し、
ちょっと外へ気分転換にでも出たのだろう。
そのあとでまた、別の友だちが続けてカギを借りに来たというわけだ。
司書1さんが、じょうずに対応してくれてよかったー。
それにしても、「メアリーセレスト号事件」って・・・。
やっぱり、わたし、世間の人とはちょっと違っているのかなぁー?
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- 2016.07.25 Monday
- 他人の気持ちがわからない
- 10:56
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- by あおな